2022閑話録1(有馬 作句集)
| ・冬麗や検査を終へてカフェテリア | ・万歳と冬日欲しがる芽の固し |
| ・水仙や横断歩道を手をつなぎ | ・一軒の空き家埋ずめて朽ち落葉 |
| ・駅前のビル解体の音寒し | ・梅一輪水飲む小鳥きりもなや |
| ・急坂を犬と子が先息白し | ・不揃ひも香の良くて柚子湯かな |
| ・啓蟄や一品ふやす料理本 | ・外つ人の坊主めくりの独り勝ち |
| ・手すさびの器の良けれ木の芽和 | ・待合ひの裾に氷柱の行基像 |
| ・仲間待つ梢に一羽寒夕日 | ・鳴き交はす梅一輪を賑はして |
| ・何店も歩いてバレンタインチョコ | ・デパートの売場巡りやバレンタインチョコ |
| ・本復の散歩ゆたかや春隣 | ・春の山都の煙揺るぎなし |
| ・音のなく光撥きて春の川 | ・幾条の日矢に波音雪解川 |
| ・雪しまく七堂伽藍搔き消して | ・水煙も鴟尾も隠して霙かな |
| ・寒空に声のくぐもる野鳩かな | ・しぐるるや御蓋の山を煙らせて |
| ・しぐるるや陽射し時をり朱雀門 | ・冬ざるる餌台つとに絶へ間なし |
| ・湯豆腐や何時しか愚痴を聞く役に | ・新雪の哀しきまでの空の碧 |
| ・雨やまず二月の空を濁らせて | ・にんがつにして早や霊園の色ゆたか |
| ・水溜飛ぶ子入る子春きざす | ・一晩の地球太らせ霜柱 |
| ・職退いてよもやのバレンタインチョコ | ・バレンタインチョコ待ちくたびれて日曜日 |
| ・春の色菓子職人の指先に | ・お年玉賀状一番違ひのまたひとつ |
| ・残雪や山里すでに動き出し | ・靴跡の乱れて雪の駅近し |
| ・風花や歌声弾む一限目 | ・風花や湯煙に顔なでられて |
| ・子の駆ける長き堤や雪残る | ・雪残る中洲に小舟繋ぎをり |
| ・陽を撥ねて凍る小鳥の水飲み場 | ・リベンジはぜんざいの後初テニス |
| ・手すさびの寅の置物御慶かな | ・桜散る風の意のまま翻り |
| ・大寒や轆轤の土の立ち上がる | ・幾たびも急かれ尿する寒の暁 |
| ・芝青む我が物顔に猫闊歩 | ・江戸時代からの秘伝のおでん出汁 |